発語のない息子と、新幹線で富山へ。「できた」が4つ増えた1泊2日

育てる日々

ひいおばあちゃんに会いに、富山へ行ってきました。

一緒に行ったのは、発語のほとんどない8歳の息子・リョウと妻、そして私の3人。

障害のある子どもとの旅行は、「楽しみ」より先に「大丈夫かな」が頭に浮かびます。

新幹線に乗れるだろうか。
ホテルで眠れるだろうか。
知らない場所でパニックにならないだろうか。

そんな不安を抱えて出発した1泊2日。

でも帰ってきて振り返ると、この旅でわが家には「できた」が4つ増えていました。

その4つは、これから先の旅行のハードルを、少しずつ下げてくれる「できた」だった気がします。

本当は、一人で行くつもりだった

富山の施設で暮らすひいおばあちゃんに、ずっと会いに行けていませんでした。

距離も遠いし、リョウを連れての長距離移動を考えると、どうしても腰が重くなる。

ちょうど娘のメグはサマースクールのキャンプ中。

だから今回は、俺ひとりで行ってこようと思っていました。

そんな話を妻にすると、返ってきたのは一言。

「頑張って、私とリョウも一緒に行きたい。」

この一言で、今回の帰省は「義務」から「旅行」に変わりました。

やることは何も変わっていないのに、不思議と楽しみになったんです。

できた① 新幹線2時間半に乗れた

朝、娘を送り出してから駅で妻と合流し、新幹線へ。

リョウは窓際に座ると、外を眺めながら時々

「アンパンマン」
「鳥さん」

と、自分の世界の言葉をぽつりぽつり。

少し声は大きかったものの、泣き叫ぶこともなく、父判定では十分セーフ。

新幹線の窓際で外を眺める男の子(イラスト)

今回の成功には、わが家なりの作戦がありました。

それは、

「退屈を食べ物で埋める作戦」。

お昼ご飯も、おやつも、一気には出さない。

少し食べて、少し休んで、また少し。

時間を細かく区切るだけで、2時間半が意外なほど短く感じられました。

さらに、親は交代制。

妻が休む時間。
俺が休む時間。

「見る係」を交代しながら過ごしていたら、気づけば富山。

親2人がかりではありますが、それでも新幹線を平和に乗り切れたことは、わが家にとって大きな成功でした。

できた② ひいおばあちゃんに会えた

駅でレンタカーを借り、途中でジェラートを食べてから施設へ。

久しぶりの再会でした。

おばあちゃんは、本当にうれしそうでした。

リョウは会話はできません。

でも、ベッドの横でぴょんぴょん跳ねながら楽しそうにしていました。

きっと、あれがリョウなりの「会えたよ」という挨拶だったんだと思います。

以前プレゼントしたデジタルフォトフレームには、新しい写真も追加。

帰ったあとも、家族の写真が毎日流れ続けます。

しばらくするとリョウが言いました。

「お家に帰ろう。」

数少ない言葉の一つです。

おばあちゃんも夕食の時間だったので、

「また来るね。」

そう約束して施設をあとにしました。

できた③ 親戚の家に入れた

夜はホテルへ荷物を置いてから親戚のお宅へ。

お寿司にオードブル。

たくさんのごちそうを用意して迎えてくださいました。

でも最初のリョウは、玄関から先へ進めませんでした。

知らない家。
知らない人。
自分に集まる視線。

20〜30分ほど、玄関近くから中を眺めているだけ。

「今日は無理かな。」

そう思っていました。

ところが、大人たちの会話が盛り上がり、みんなの視線が自然とリョウから外れた、その瞬間。

気づけば、普通にリビングへ入ってきていました。

視線が減ると、動ける。

これもリョウらしい特徴です。

親戚のみなさんも本当に自然でした。

「これ食べそう。」

と言えば、

「どうぞどうぞ!」

と受け入れてくださる。

必要以上に構わず、それでいて温かい。

その距離感が本当にありがたくて、最後にはイクラ、おいなりさん、唐揚げを頬張りながら、すっかりくつろいでいました。

できた④ ホテルで、お母さんと2人で眠れた

実は今回、一番心配していたのはここでした。

俺は親戚の家に泊まり、ホテルには妻とリョウだけ。

普段は布団生活。
慣れないホテル。
慣れないベッド。
しかも父はいない。

夜中に起きることもある子なので、正直かなり心配でした。

22時。

23時。

LINEを送るものの、途中から既読がつかない。

「あ、寝たな。」

翌朝聞くと、22時過ぎにはいつも通り眠ったそうです。

これは、わが家にとって本当に大きな一歩でした。

「ホテルで寝られた。」

その経験が一つ増えただけで、

「また旅行に行けるかもしれない。」

そんな自信につながったからです。

家族の行動範囲が、一気に広がった夜でした。

2日目は豪雨。でも、それでも十分だった

2日目は大雨。

遊園地は断念。

水族館へ行ってみましたが、暗い館内はリョウには合わず、短時間で終了しました。

でも、不思議と残念じゃありませんでした。

今回の目的は、

ひいおばあちゃんに会うこと。

それは初日に達成しています。

親戚の家にも入れた。
ホテルでも眠れた。

だから、おまけの予定がうまくいかなくても、この旅は十分成功だったんです。

目的を一つに絞っておく。

それだけで、旅行の満足度はこんなにも変わるんだと学びました。

「2対1なら余裕」。そして次の宿題

帰り道、妻と話した結論は一つでした。

「親2人で、リョウ1人なら旅行はいける。」

でも同時に気づいたこともあります。

今回は、娘がキャンプに行っていたからこその「2対1」。

もし親2人に子ども2人なら、どうしてもリョウへ手がかかり、メグに我慢をさせてしまう場面も増えるでしょう。

それが、次の宿題です。

一方で、メグもこの2日間、親元を離れてキャンプという冒険をしていました。

家族それぞれが、それぞれの場所で「できた」を一つずつ増やして帰ってきた夏休み。

次は4人で富山へ行きたい。

その頃には、俺と妻の「見る係」のシフト表は、今より少し忙しくなっているかもしれません。

でも、それもきっと悪くない。

そんな未来が、少しだけ近づいた気がした旅でした。

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