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「この子より、1日だけ長く生きたい」——重い知的障害のある子を育てる親なら、一度は聞いたことのある言葉だと思う。
うちの息子リョウ(仮名・7歳)は、発語がない。重度の知的障害がある。可愛くて、面白くて、毎日笑わせてくれる。それでも、ふとした瞬間に思うのだ。俺と妻がいなくなったあと、この子は大丈夫なんだろうかと。
ただ、正直に書くと、僕はそこで眠れなくなるタイプではない。食品スーパーで15年、現場の主任をやってきて、コツコツ投資も続けてきた。数字を見れば、うちがそう悪くない状態なのは薄々わかっている。
でも「薄々わかっている」って、いちばんタチが悪い。ちゃんと向き合っていないから、不安だけが漠然と残る。だから今回、腹を決めてやってみた。逃げるんじゃなくて、正体を見てやろうと思ったのだ。テーマはひとつ。「いくらあれば、本当に枕を高くして眠れるのか」。
まず、世間の「安心額」を並べてみた
感情で不安がるのはやめて、まず「一般的にいくらあれば安心とされているのか」を調べて並べた。よく使われるものさしは、だいたいこの3つに集約される。
特に②の「親亡きあと2,000〜3,000万円」は、障害のある子の親なら一度は目にする数字だと思う。福祉の本にもよく載っている。
で、自分の家計をこのものさしに当ててみた。結論から言うと、数字の上ではどれも足りていた。……はずなのに、なぜか安心しきれない。しばらく考えて、その理由に気づいた。
「いくら貯めたか」より「毎月いくら入るか」だった
①〜③のものさしは、全部「いくら“貯まっているか”」の話なのだ。つまり、大きな貯金の山をイメージしている。
でも、山はどれだけ高く積んでも、崩して使えば減っていく。親が死んだあと、その山を誰かが管理して、毎月少しずつリョウのために取り崩していく——想像すると、正直こわい。山が目減りしていく絵しか浮かばないから。
逆に、毎月きまった額が“入ってくる”仕組みなら、減らない。山を取り崩す不安がそもそも生まれない。そう考えたら、目指すゴールがはっきりした。作るべきは大きな山じゃなくて、リョウの口座に毎月お金が入り続ける“蛇口”だったのだ。
たどりついた答え「親亡きあとを支える4本柱」
じゃあ、その蛇口をどう作るか。調べて、組み立てて、行き着いたのが「4本柱」という考え方だった。国が用意してくれている柱が2本、自分で育てる柱が2本ある。
まず注目してほしいのが、①の国の制度2本だけで、毎月12.7万円の“土台”ができるということ。障害年金1級(月8.7万円ほど。等級や年度で変わる)と、障害者扶養共済という制度に2口入っておく(月4万円)。この2本は、親が特別お金持ちでなくても作れて、しかも一生つづく。
ただ、扶養共済はいいことずくめではない。加入には親の年齢や健康状態などの条件があり、毎月それなりの掛金を払い続ける必要がある。年齢が上がるほど掛金も上がるので、「入るなら早めに検討」というのが正直なところ。それでも、親が亡くなったあとに子へ一生お金が渡る仕組みは、他になかなかない。
そのうえに、自分で育てる柱を積む。ひとつは株の配当。株を売らずに持ち続けるかぎり、配当を受け取り続けられる(もちろん、会社の業績しだいで増えたり減ったりはする)。もうひとつは家賃収入。うちはたまたま小さな賃貸物件があって、ローンを返し終われば家賃がまるごと入ってくる。
——ここで「うちには物件なんてないよ」と思った人、大丈夫。②の中身は、その家にあるものでいい。家賃がなくても、株の配当は月に数千円ぶんの株からでも小さく始められる。大事なのは、①の“土台”を知ったうえで、②を自分のペースで一本ずつ育てていくこと。土台の作り方だけは、あなたの家でも同じように使えるはずだ。
※ちなみに、わが家の株はぜんぶ楽天証券で買っている。これから始めるなら、手数料の安いネット証券なら正直どこでも大差ない。
それでも消えない不安と、どう付き合うか
正直に書くと、ここまで整理しても、不安が完全にゼロになるわけじゃない。リョウの寝顔を見ながら、「本当にこの子は幸せなんだろうか」と考える夜は、この先もきっとある。
でも、ひとつだけ変わったことがある。気持ちは揺れても、数字は揺れない。不安になったら、この4本柱の図を見返せばいい。土台の12.7万円は、僕が落ち込んでいる夜も、変わらずそこにある。
「明るい未来」って、祈って待つものだと、どこかで思っていた。でも違った。設計するものだった。怖いなら、正体を見て、一本ずつ柱を立てればいい。それだけで、枕はずいぶん高くなる。
同じように「この子より1日だけ長く」と思っている、どこかの親御さんに届いたらうれしい。次は、この4本柱を1本ずつ、どう立てていくのかを具体的に書いていこうと思う。
▶ 制度と資産の使い分けをもっと詳しく書いた記事:【親亡き後】重度知的障害の長男のために父が組む資産設計──障害年金・特定贈与信託・高配当株の使い分け
この記事を書くのに読み返した本。『障害のある子の「親なきあと」』(渡部伸)——同じ立場の親の間では定番の一冊で、制度の話はこれがいちばん平易だった。


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