爪切りを嫌がる子どもが変わった。「お願い」が通じた日

自閉症 健康について

「爪切り=大騒ぎ」だったわが家

爪切りを持った瞬間、子どもが全力で逃げる。

そんな経験はありませんか?

わが家の7歳の息子・リョウは、爪切りが大の苦手でした。特に足の爪は伸びると割れやすく、ひどいと血が出てしまうこともあります。しかも絆創膏も貼らせてくれないので、痛がったまま気にして、本人が一番つらそうなんです。

それでも爪切りを持って近づけば、一目散に逃げる。

「今日はどうやって切ろう……」

爪切りの時間が近づくだけで、親のほうが気が重くなる。そんな日が何度もありました。

放っておけば足が痛くなる。でも、近づけば逃げる。

結局、「このままだと本当に危ない」というところまで来ると、夫婦2人がかりで押さえつけて切るしかありませんでした。

泣き叫ぶ息子。

必死に押さえる親。

終わったあとは、親子そろってぐったり。

正直に書きます。そうやって切った夜は、リョウの寝顔を見ながら「ごめんな」と思っていました。パパのこと、怖い人だと思ってないかな、と。分かっていても、他に方法が見つかりませんでした。

子どものケアで一番つらいのは、「本人のためなのに、本人が一番嫌がる」ことです。

これは「しつけ」の問題ではない

「爪切りくらい我慢させないと。」

そう言われることもあるかもしれません。

でも、私はこれはしつけの問題ではないと思っています。

リョウは言葉でのやり取りが難しい子です。

「爪を切らないと足が痛くなるよ。」

そう説明しても、本当に意味まで伝わっているのかは分かりません。

彼にとって爪切りは、「理由も分からず、怖いことをされる時間」だったはずです。

だから本質は、

「爪を切れるかどうか」ではなく、「この人は自分に怖いことをしない」と信じてもらえるかどうか。

私は食品スーパーの現場で15年、部門をまとめる仕事をしています。

新しい仕事をお願いするときも、まず必要なのは「この人なら大丈夫」という安心感です。

それがないまま正論だけ伝えても、人は動きません。

子どもも、きっと同じなんだと思います。

なぜ「押さえつける」しかなくなっていたのか

今振り返ると、原因は3つありました。

① 「どうせ伝わらない」と説明を省いていた

言葉が伝わりにくいと、つい説明を飛ばしてしまいます。

でも、言葉の意味が全部分からなくても、口調や表情、雰囲気はちゃんと伝わっています。

説明を省くことは、予告なしに怖いことをする人になってしまうことでした。

② 限界まで待ってしまっていた

忙しい毎日の中で、爪はつい後回し。

「もう割れそう」というタイミングで慌てて切ろうとするから、こちらにも余裕がありません。

焦りは、そのまま力ずくにつながっていました。

③ 「怖かった記憶」が積み重なっていた

押さえつけて切るたびに、

「爪切り=怖い」

という記憶だけが強くなる。

力ずくの1回が、次の10回を難しくしていたんです。

急がば回れ。力ずくの1回は、信頼の10回分を消してしまう。

そう気づきました。

転機は「お願い」だった

先日も、足の爪が欠け始めていました。

このままでは、また割れてしまう。

いつものように逃げるリョウを見ながら、今回は追いかけるのをやめました。

そして少し離れたところから、こう声をかけました。

「お願いだから、足の爪を切らせてくれないかな。」

「このままだと痛くなっちゃうからさ。」

「絶対に痛くしないから、大丈夫。」

すると――

リョウが、自分から足をスッと私のほうへ差し出したんです。

正直、信じられませんでした。

「え……本当に?」

そんな声が出そうになるくらい驚きました。

情けない話ですが、その瞬間、ちょっと泣きそうになりました。ああ、伝わってたんだ、って。

試しに親指を一つだけ切る。

パチン。

一度だけ足を引っ込めました。

でも、

「ほら、痛くなかったでしょ。」

「大丈夫、大丈夫。」

そう声をかけながら続けると、また足を出してくれました。

そのまま、両足すべての爪を切ることができたんです。

話の意味がどこまで伝わっていたのかは分かりません。

でも、ひとつだけ確信したことがあります。

言葉が通じなくても、気持ちは伝わる。

お願いすることにも、ちゃんと意味がある。

私にとって、それは大きな発見でした。

勢いで目薬にも挑戦してみた

その勢いのまま、もうひとつ挑戦しました。

目薬です。

リョウは目をかくことが多く、ハウスダストの影響かもしれないと思っています。

でも、これまで目薬は一度も成功したことがありませんでした。

「目、かゆいよね。」

「これをチョンってやれば楽になるよ。」

そう声をかけながら顎をそっと支えると……

なんと、自分から上を向いてくれました。

完全に目を開けることはできませんでしたが、半分くらいは点眼することができました。

そのあと、目をかく回数も少し減ったように感じました。

爪切りで生まれた「大丈夫だった」という経験が、そのまま次の挑戦につながった気がしています。

爪切りを嫌がる子どもに試してよかった4つの工夫

今回の経験から、「嫌がるケア」で悩んでいる方に伝えたいことがあります。

① 理由とお願いをセットで伝える

「○○だから、お願い。」

意味が全部伝わらなくても、気持ちは伝わります。

② 最初の成功をすぐ言葉にする

「ほら、痛くなかったね。」

成功体験をその場で言葉にしてあげると、恐怖の記憶が少しずつ上書きされていきます。

③ 緊急になる前にやる

親に余裕があるタイミングのほうが、子どもも安心しやすいです。

④ ひとつ成功したら、次にも挑戦してみる

成功体験は自信になります。

わが家では、爪切りのあとに目薬へつながりました。

まとめ|成長は、静かに積み上がっている

正直なところ、毎日の生活では「成長しているのか、していないのか分からない」と感じる日もたくさんあります。

会話でのやり取りが難しいぶん、なおさらです。

でも、諦めずにお願いし続けた爪切りが、ある日突然できるようになった。

目薬も少しだけできるようになった。

昨日まで何も変わっていないように見えても、見えないところでは少しずつ信頼が積み重なっていたんだと思います。

次は、少し伸びてきた髪の毛のカットに挑戦する予定です。

その結果も、またこのブログで報告しますね。

もし今、爪切りや歯みがき、耳掃除、目薬など、「嫌がるケア」で悩んでいる方がいたら、焦らなくても大丈夫です。

子どもは、昨日できなかったことが、ある日突然できるようになります。

その「突然」は、昨日まで積み重ねてきた信頼の上にあります。

あの日、スッと差し出してくれた小さな足を、私はたぶんずっと忘れません。

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