「エナ、本を読んだら200円な」——非エンジニアの父がAIでお小遣いアプリを作った話

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俺の体は、活字でできてる。

大げさに聞こえるかもしれないけど、わりと本気でそう思っている。15年間、同じ現場で働いてきて、どうにか辞めずに続けられたのは、たぶん本を読んできたからだ。しんどい夜に読んだ一冊が、翌朝の足を動かしてくれた——みたいなことが、何度もあった。

だからエナにも、本好きになってほしい。

でも「読め」って言ったところで、9歳には響かない。自分だって、親に「読め」と言われて読み始めたわけじゃない。じゃあどうするか。仕組みを作ろう、と思った。読んだら、お小遣いが増える仕組み。

正直に書くと、これが正解なのかはわからない。本って、お金で釣って読ませるものなのか。押し付けてるだけじゃないのか。その迷いは、今もある。あるけど、やってみることにした。

俺の体は、活字でできてる

子供の頃から本が好きだった。小学生のときに図書室で片っ端から借りて、中学でハマったのは歴史小説。高校では新書にのめり込んだ。社会人になってからは、仕事に直結するビジネス書ばかり読んでいた時期もあるし、しんどくなって小説に逃げた時期もある。

どの時期にも共通していたのは、「読んでいる間だけ、自分が少しマシな人間になれる気がした」ということだ。大した人間じゃない。でも本を読んでいると、大した人間の思考を借りられる。それだけで、なんとかなった夜がある。

今のエナは、放っておいても本を読む子だ。名探偵コナンは1巻から100巻まで揃えた。『ざんねんないきもの事典』は何度も読み返しているし、最近は図書館で『銭天堂』を借りてきて夢中になっている。

でも、「好きで読んでいる」と「習慣として読んでいる」は違う。好きなシリーズが終わったら、次に手が伸びるかどうか。そこに仕組みがあるかどうかで、たぶん変わる。

親のエゴだと思う。自分が本に救われたから、娘にも同じ体験をさせたいなんて、完全に親の都合だ。でも、エゴだと自覚した上で、やる。エナが大人になったとき、「本が好きでよかった」と一度でも思ってくれたら——それだけで、このエゴは報われる。思ってくれなくても、まあ、仕方ない。

「本を読んだら200円」のルール設計

エナの今のお小遣いは、月500円。4年生の相場としては、まあ普通だと思う。

これに、読書加算をつけることにした。ルールはシンプルにした。

  • 120〜200ページの本 → +200円
  • 200〜340ページの本 → +300円
  • 400ページ以上の本 → +500円
  • 漫画1冊 → +70円

月末に集計して、翌月頭のお小遣いに上乗せする。

金額は、けっこう悩んだ。安すぎると「別にいいや」になる。高すぎると、読書がバイトになってしまう。「もう一冊読もうかな」が自然に生まれるラインを狙った。200円って、駄菓子屋で少し迷える金額だ。あの「どれにしよう」の時間を、エナに増やしてあげたかった。

漫画も対象にした。ここは迷わなかった。俺自身、漫画から読書に入った人間だから。入口は何でもいい。活字に触れること、ページをめくること、物語に入り込むこと。その体験に漫画も本も境界はないと思っている。ただ、さすがに同じ金額にはしなかった。漫画は1冊70円。コナン100巻を全部申告されたら7,000円になるけど、まあ、それはそれで大したもんだ。

——と、こうやって設計を語っているけど、後ろめたさはある。金で釣ってるじゃないか、と。

でも、考え直した。お金の教育でもあるんだ、これは。「何かをしたら対価がもらえる」という仕組みを、小さいうちから体験させたかった。投資だって、仕事だって、仕組みで動いている。読書もその一つに入れてしまっていいんじゃないか。

エナが「これは何ページだから300円だ」と計算し始めたら、それはそれで面白い。

コードがわからない父、AIに頼る

ルールが決まった。じゃあ、どうやって記録するか。

ノートに書く? スプレッドシート? ——いや、せっかくだからアプリにしよう。と思った。

思ったはいいけど、俺はソースコードを一行も書けない人間だ。プログラミングの「プ」の字もわからない。変数って何? 関数って何? そのレベルだ。

でも最近、AIと話しながら何かを作る体験を少しだけしていた。ブログの自動投稿の仕組みを、Claude Codeに手伝ってもらって作ったことがある。あのとき、俺はコードを書いていない。AIが書いたものを、「動いた」「動かなかった」と伝え続けただけだ。それでも、ちゃんと動くものができた。

だったら、お小遣いアプリも作れるんじゃないか。

まずGeminiに「こういうアプリ作りたいんだけど」と相談した。返ってきたのは「こう作ればいけますよ」という、俺にはまだ半分しかわからない説明だった。でも「いけますよ」の一言で十分だった。

そこからClaude Codeで、少しずつ組み立てていった。エナの名前を入力する画面、本のタイトルを入れる画面、ページ数を入れたら自動で加算額が出る画面。AIが作って、俺が「ここ違う」「もうちょっとこう」と伝えて、また直してもらう。その繰り返し。

正直、AIが何をやっているかの半分は理解できていない。ターミナルに流れるログも、エラーメッセージの英語も、ほとんど読めない。でも、動いた。画面にエナの名前が表示されて、本のタイトルを入れたら「+200円」と出た瞬間、声が出た。

「マジか」って。

俺みたいな人間でも、アプリが作れる時代が来たんだな、と思った。わからないまま、動くものができる。それは怖いことでもあるけれど、今夜に限っては、ただ嬉しかった。

エナの反応

この章は、エナが実際に使い始めてから書く。

どんな顔をするのか。「やった」と飛びつくのか、「ふーん」と冷めているのか。あの子のことだから、まず金額を確認して、「漫画もいいの?」と聞いてくる気がする。

楽しみにしている。続報を待っていてほしい。

仕組みで動かす、という父親のクセ

こうやって振り返ると、俺はいつも「仕組み」を作ろうとしている。

タカラの将来のために、資産設計を組んでいるのも仕組みだ。高配当株でキャッシュフローを作って、障害年金と特定贈与信託で「親亡き後」を埋めていく。あれも、感情ではなく、仕組みで安心を作ろうとしている。

エナの読書アプリも、根っこは同じだ。「読め」じゃなくて、「読みたくなる仕組み」。「心配してる」じゃなくて、「心配しなくていい設計」。

いつか盆栽を核にした居場所を作りたいと思っているのも、結局は仕組みの話だ。タカラが大人になったとき、手を動かして、誰かに「ありがとう」を言ってもらえる場所。それを、気持ちではなく形として残したい。

——たぶん、俺は不器用なんだと思う。気持ちを言葉にするのが、あんまりうまくない。だから仕組みに変換する。「好きだよ」の代わりに、アプリを作る。「心配してるよ」の代わりに、資産表を作る。

エナが大人になって、本が好きだった理由を誰かに聞かれたとき——「お父さんが作ったアプリがきっかけだった」って言ってくれたら。

まあ、泣くだろうな。

言ってくれなくても、別にいい。仕組みは、ちゃんと動いていれば、それでいい。

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